Allystar HD9310の新評価基板

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デザインが変わったHD9310新評価基板

準天頂測位衛星みちびきは、測位信号だけでなく、高精度なその補強信号をも放送しています。このCLAS(centimeter level augmentation system、シーラスと読みます)信号、およびMADOCA(multi-GNSS advanced demostration tool for orbit and clock analysis、まどかと読みます)信号を受信するためには、L6帯と呼ばれる周波数1278.75 MHzの受信機が必要です。

Allystar HD9310は、現在のところ最も安価にこのL6帯信号を受信できるチップです。これまでに、HD9310評価基板を試してきました(Allystar HD9310の実験Allystar HD9310ファームウェアのアップデートAllystar HD9310オプションCを用いたみちびきCLAS補強情報抽出)。実際に利用したものは、HD9310を搭載したDATAGNSSの受信モジュールTAU1302です。この評価基板を追加購入したところ、基板のレイアウトが更新されていました。

このHD9310には2種類のファームウェアがあり、それぞれ、CLAS信号受信用とMADOCA信号受信用です。この評価基板には、DATAGNSSのホームページにある最新のCLAS信号受信用のファームウェア3.018.bcc6590が適用されていました。

1-PPS表示LEDがなくなりリチウム電池充電機能が搭載された

旧基板では、1-PPS (pulse-per-second)、電源、USBポートのTXD (transmission data)、RXD (reception data)の4つのLEDがありました。しかし、旧基板での1-PPS LEDは消灯したままでした。また、旧基板には、アンテナへの電源供給有無を設定するスイッチがついていました。

Alystar HD9310 top view

これが新基板です。絶縁のための熱収縮チューブに覆われるようになりました。また、右上部のコネクタには次の刻印がありました。

ピン番号(左から右) 刻印
1 GND
2 NC
3 PPS
4 TX
5 RX
6 5V

信号が外部に取り出せるようになったのは嬉しいです。また、新基板の右下には、リチウムイオン電池接続用と思われる、JST PH 2ピンコネクタが追加されました。基板にはVBATおよびGNDの刻印があります。このコネクタ端子の開放電圧を測定したところ、1.8 Vでした。リチウムイオン電池を充電するのには電圧が低いようです。電池管理ICの型番は読み取れませんでした。

また、この新基板には、旧基板にはなかった、エフェメリス保存用のキャパシタが取り付けられています。新基板では、電源再投入から測位開始までの時間短縮が期待できます。

一方、LEDは基板中央上部に集約され、電源(PWR)、Bluetooth(BT)、充電(CHRG)、および充電完了(FULL)に変更になりました。また、アンテナへの電源供給スイッチが廃止されました。この評価基板にはBluetooth通信機能はなく、また、この電池充電機能の使い方が不明ですので、LEDに関しては以前のものの方がよかったです。

Alystar HD9310 bottom view

これが新基板の裏面です。CLAS信号受信機能を表すL6Dと、MADOCA信号受信機能を表すL6Eの文字があります。

また、旧基板と新基板とでUSBシリアルポートのデバイスが変更されています。旧基板ではSilicon Labs. CP210xのものが使われていたのに対し、新基板ではFTDIのものが使われています。

窓際アンテナでの衛星信号受信

最下層にある私の研究室の窓際に、L1周波数帯(1575.42 MHz)とL2周波数帯(1227.6 MHz)との両方を受信できるアンテナをおいて、このL6帯(1278.75 MHz)衛星信号を受信してみました。L2帯は、L6帯と、L5帯(1176.45 MHz)との間にあります。そこで、普及しているL2帯アンテナを用いて、L6帯信号が受信できることを期待していました。大学屋上にはL6帯を受信できるアンテナがありますが、ここではL1帯とL2帯の両方を受信できるアンテナにてL6帯受信を試しました。はじめは、正体不明の4重ヘリックスアンテナです。

Alystar HD9310 with quadrifilar helix antenna

結果は、GPS信号のいくつかが受信できるのみでした。次にTOPGNSS GN-GGB0710を接続しました。

Alystar HD9310 with TOPGNSS GN-GGB0710

多くのGPSとみちびきのL1帯信号が受信できるようになりましたが、みちびきのL6帯信号は受信できませんでした。次のアンテナは、u-blox ANN-MB-00です。

Alystar HD9310 with u-blox ANN-MB-00

先のアンテナと比較して、このアンテナでは受信できる衛星数が少なくなりました。一般に、アンテナは大きい方が、より多くの衛星信号を受信できるようです。結局、このままではL6帯信号は受信できませんでした。

ファームウェアのMADOCA用への更新

私は、旧基板にてCLAS信号を連続観測しています。そこで、この新基板ではMADOCA信号を受信しようと思い、そのファームウェアをMADOCAのものに更新しました。ファームウェア更新後のソフトウェアバージョンは3.018bcc6590であり、先のCLASのものと同じでした。

Alystar HD9310 firmware update for MADOCA signal reception

この新基板も大学屋上に設置しました。これは、その新旧のHD9310評価基板の写真です。

Comparison of new and old HD9310 EVK boards

新型基板は、旧型基板と比較して、大きさが約2倍になっています。旧基板はEmlid REACH RTKと同程度の大きさでしたので、新基板はサイズの点では残念でした。

JAXA(Japan Aerospace Exploration Agency)のインターネット経由でのMADOCA配信サービス終了が2020年1月にアナウンスされていますが、現時点ではまだ配信されています。また、グローバル測位サービス(GPAS)は、インターネットでのMADOCA配信サービスを2020年1月に開始しました。私もこのGPASによるMADOCA配信サービスに申し込みました。JAXAとGPASとのMADOCA補強情報をRTK基準局データに適用したところ、僅かながら異なる座標値を示しています。みちびきから放送されるものも含めて、JAXAからのMADOCA配信が終了する前に、この3つのMADOCA補強情報を比較したいです。

JAXAから内閣府に出向されている小暮様の2020年9月のCGSICでのスライドの16ページによると、みちびき6号機がインド洋上空に配置されることになったようです(S. Kogure, QZSS Update, CGSIC International Session, September 21, 2020)。東京海洋大学の高須先生の2020年9月23日の記事にリンクがありました。三脚の足が開いていた方がより安定するのと同様に、地理的に離れた場所に測位衛星がある方が位置観測精度をより高めることができるので、この静止軌道を確保できたことは大変おめでたいことです。みちびきは、技術的に興味深い方向に進んでいると思います。


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