PocketSDRすごい(パーツ購入編)
はじめに
東京海洋大学の高須知二先生がGitHubで公開されているPocketSDRのハードウェア作成を目指しています。
これは、GNSS(global navigation satellite system)電波を受信するソフトウェア無線機(SDR: software defined radio)で、電波受信ハードウェア設計資料と衛星信号処理ソフトウェアからなります。特に、このソフトウェアにより、衛星測位受信機のバックヤードを覗けるだけでなく、未だ市販受信機のない最新信号も復調できるので、夢中で追いかけています。
PocketSDRには、多くの人にハードウェア追試ができるよう、設計資料がまとめられています。GNSS信号を取り込むICである、Maxim MAX2771に対してチューニングされた設定ファイルも同梱されています。
今回、このハードウェア設計資料をもとに、プリント基板(PCB: printed circuit board)と部品を発注しました。本来、ハードウェア作成は手間のかかるものです。しかし、PocketSDRは、少ない工数で部品発注できるように資料が整っていて、すごいです。
プリント基板とステンシルの発注
PocketSDRでは、部品間配線を行うプリント基板の設計データとして、Autodesk EAGLE形式ファイルが提供されています。プリント基板CADソフトウェアEAGLEの利用には、Autodeskアカウントが必要です。私は、以前にCADソフトウェアAutodesk Fusion 360を利用したときに、Autodeskのアカデミックアカウントを作成しましたので、今回はそれを利用しました。ホビイスト(電子工作愛好家)向けの無償アカウントでも、このガーバファイルを作成できると思います。
PocketSDRのHW
(ハードウェア)ディレクトリにある、基板ファイルpocket_sdr_v2.1.brd
をEAGLEにて開くとプリント基板画面が表示されます。
EAGLEには、Seeed Studio社のFusionPCBへの発注ファイル作成の設定ファイルが用意されているので、それを利用しました。もちろん、FusionPCB以外に発注するためのガーバファイルも作成できます。
Seeed FusionPCB - Autodesk Eagleからガーバファイルを出力する方法とは?
このようにして作成したガーバファイルpocket_sdr_v2.1.zipをFusionPCBにアップロードします。
ガーバファイルをアップロードすると、プリント基板サイズがこのファイルのものに更新されました。プリント基板枚数は標準では10枚です。これを5枚に変更することもできますが、その作成料金は変わりませんでした。
続けて、ステンシル(メタルマスク)作成のためのガーバーファイルをアップロードします。ステンシルは、プリント基板の上に被せて、上からはんだクリームを塗るために用います。
ステンシル用のガーバファイルとして、はんだ面のものをアップロードするようです。実は、よくわからなくて、プリント基板用のガーバファイルをアップロードしました。先方に手間をかけさせてしまったかも知れません。
ステンシルサイズは2種類から選びますが、今回は小さい方のもので充分です。小さいものは、価格も少しだけ安いです。
プリント基板とステンシルの合計価格は13.8USドルでした。PayPal経由にて、これに送料を加えた日本円4,000円程度を支払いました。送料が高額です。
DESCRIPTION UNIT PRICE QTY AMOUNT
PCB Stencil Service $8.90 USD 1 $8.90 USD
Item# 503000001
Fusion PCB $4.90 USD 1 $4.90 USD
Item# 501010001
Discount/ShippingFee $17.27 USD 1 $17.27 USD
Subtotal $31.07 USD
Total $31.07 USD
部品の発注
部品発注には、PocketSDRのHW
(ハードウェア)ディレクトリにある、エクセルファイルpocket_sdr_v2.1_parts.xlsx
を用います。このファイルには、Digi-Keyのパーツ番号が記載されているので、サイト上にアップロードするだけで、部品名や数量が自動的に入力されます。ここでエクセルシートのAssembly
蘭の値がゼロになっているパーツが注文されているか確認してください (2022-05-17追記)。
金額合計が6,000円以上ならば送料免除になります。ここでは、当面、2式作成できるよう、アセンブリ欄を2にしました。キーパーツであるMAX2771の在庫がゼロなので、残念ですが、この項目を除きました。また、このパーツリストには、プリント基板やネジなども記述されていますので、Digi-Keyに発注する部品以外も同様に除きます。
メモリチップAT24C128Cの欄に「繰越注文」と書かれています。これは、現在は数量分の在庫がなく、入手次第に発送されるとの意味のようです。まずは、在庫部品を入手したいため、この繰越注文品もパーツリストから除きました。
次に、納品先住所とともに、輸出管理情報が求められます。私は、PocketSDRを自らのために用いますので、再販にはいいえを、アプリケーションには民生用を選択しました。追加情報として、本当は「スーパーで、スペシャルな、超高性能GNSS受信機」と書きたいところですが、ここでは無難に「GPS receiver」としました。ここは英語で書きます。
出荷方法は、「UPS Worldwide Saver」と「FedEx International Priority」から選べます。なんとなく、Saverは安価なイメージ、Priorityは高級なイメージがあります。ここでは、配送料免除、かつ、配達日数は同じなので、無用な負担をかけないよう、UPSを選びました。海外から物品購入すると、忘れた頃に輸入税と手数料があわせて請求されることもあります。ここでの価格は、関税も含んだものになっていて、ありがたいです。
支払方法を設定し、注文全体をレビューして、注文ボタンを押せば、注文は完了です。私はPayPalにて代金を支払いました。日本円決済です。
今回は、在庫不足などで、
- 受信IC Maxim MAX2771ETI+ 2個
- EEPROM Microchip AT24C128C-XHM-T 1個
- Bias-T Mini-Circuits TCBT-2R5G+ 1個
- TCXO Epson TG2520SMN 24.0000M-MCGNNM3 1個
が注文できませんでした。これから、これらの部品を探します。
その後
(2022-05-04追記)
Mini-CircuitsのBias-T TCBT-2R5G+は、日本のMini-Circuitsの代理店であるミニサーキット横浜に発注しました。最小発注単位が10個のようでして、送料・手数料込みで13,500円でした。
EpsonのTCXO TG2520SMN 24.0000M-MCGNNM3は、コアスタッフオンラインに発注しました。予備も含めて4個発注して、送料込みで3,607円でした。
残りの未発注部品は、Maxim MAX2771ETI+と、Microchip AT24C128C-XHM-Tです。
プリント基板10枚とステンシルが届きました。手のひらサイズよりもずっと小さくて、すごいです。
(2022-05-07追記)
Digi-Keyにて、Maxim MAX2771ETI+(受信IC)と、Microchip AT24C128C-XHM-T(EEPROM)が注文可能になっていたので、これらを予備も含めて少し多めに注文しました。MAX2771は納期未定、AT24C128Cは納期9月だそうです。楽しみに待ちます。これですべての部品の発注を終えました。
(2022-05-17追記)
Epson TimingのTCXOが届きました。入手しにくい部品は高価になりがちです。
パーツリストのAssembly欄の値がゼロになっている部品がDigi-Keyにて発注されていなかったことに気がつきました。私がエクセルファイルをアップロードしたときに、設定を誤ったかもしれません。
再びDigi-Keyに発注すると送料が高くつきますので、今回はDigi-Keyとパーツの提携をしているマルツに発注しました。少しずつPocketSDRハードウェア製作の日に近づいている気がします。
まとめ
PocketSDRの設計資料がまとまっていて、少ない工数で部品発注できました。以前に、基板作成依頼や部品発注をしたこともありますが、そのときよりも簡単に発注できて、ありがたいです。残り部品の手配と、 楽しい製作と、楽しい実験が残っています。
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