スターリンクのバイパスモード

category: Radio
tags: Starlink

はじめに

高度550キロメートルの低軌道衛星を用いてインターネット接続サービスを提供するスターリンク(starlink)の実験をしています。今年の5月から利用を中断していましたが、再開します。そして、障害物の少ない遠隔地に設置したスターリンクのVPN(virtual private network)での遠隔利用してみます。この構成は、あまり実用的ではないかもしれませんが、低軌道衛星によるインターネット接続の特徴把握や、測位可能性の検討には利用できると考えています。

利用の中断と再開

なお、私は、日本国内でスターリンクと直接、契約しています。再販事業者を通してスターリンク利用契約することも可能ですが、下記のものとは異なる可能性があります。私もいくつか調べましたが、IIJの谷口さんが述べられているように、スターリンクと直接契約するのが有利なようです。直接契約ならば、例えばイーサネットアダプタオプションの購入も簡単です

利用の中断と再開は、スターリンクWi-Fiに接続したスマーフォンアプリから、または、スターリンクのホームページから、容易に行うことができます。リモートでスターリンクを再起動したり、アンテナをたたむことも可能です。

starlink usage pause

利用料金については、通常、利用開始日から1ヶ月間で課金されます。中断申請を行っても、本来の期間まではそのまま利用でき、本来の次の開始日に中断されます。

一方、再開については、いつでも可能です。再開日から次の課金日までは、日割りで課金されます。スターリンクでは、利用中断期間中の維持料金や、再開時の手数料を求めらることはありません。インターネット接続した分だけの課金であるところが、とても嬉しいです。

料金プラン

現在では、自由にプラン変更できるようになり、さらに容量制限のある優先利用プランや、追加容量購入メニューも追加されています。以前は、居住地のみ(residential)と、日本大陸内移動可能(RV: recreational vehicle)との2つのプランがあり、ひとたびRVプランを選択すると、居住地プランに戻ることはできませんでした。

利用開始(activate service)を選択すると、プランと料金の一覧が表示されます。Mobile-Regionalプラン(旧RVプラン)の1ヶ月の利用料金は9,900円ですが、この再開日から次の利用期間までの日割料金として5,602円が提示されています。再開時に他のプランを選択することも可能になりました。

starlink plan resume

利用を再開した後も、プラン移動が可能です。ここでは、再開当日で、まだ課金されていないので、Standardプラン(旧residentialプラン)への差額も0円と表示されています。

starlink plan change

スターリンクのディッシュ(アンテナ)を見通しの良い場所に設置し、電源を入れてしばらく待つと、契約情報が反映されて利用可能になります。

バイパスモードの利用 

スターリンクのインターネット接続は、通常、Wi-Fiを利用するようになっています。家庭用ルータと同様、このスターリンクのWi-Fiも、DHCP(dynamic host configuration protocol)により、接続したPCにプライベートアドレスが割り当てられます。第2世代の四角形のディッシュアンテナのものでは、IPv4アドレスとIPv6アドレスの両方が割り当てられます。

イーサネットアダプタオプションを購入すると、イーサネット接続できます。以前にこのイーサネットアダプタを利用したときには、このアダプタとPCとを直接接続できなく、ハブを用いました。今回は、イーサネットアダプタとPCを直接接続できました。ファームウェアアップデートによるものだと思います。

より高度な利用のために、この内部ルータをオフにします。このバイパスモードでは、Wi-Fiが自動的にオフになります。バイパスモードへの移行は、Starlink Wi-Fiに接続したスマートフォンの専用アプリの設定画面から行います。

entering bypass mode

この赤線部分をタッチすると、確認画面が表示されます。このスライドにより、Wi-Fiがオフになり、以降はイーサネットからスターリンクを利用することになります。元に戻すためには、電源接続と切断をくり返せばよく、そのアニメーション表示も用意されています。

confirmation of bypass mode

私の場合、なぜかバイパスモードへの移行に失敗しました。アンケートも表示されています。再びの同様操作により、バイパスモードに移行できました。

failure in trasition of bypass mode

イーサネットアダプタに接続したPCには、IPv6アドレスとともに、通常モードでのプライベートIPv4ではなく、共有IPv4アドレスが割り当てられました。プライベートIPv4アドレスのものと同様、このIPv4アドレスが付与されたPCからは、インターネットへの接続はできますが、インターネットからの接続はできません。共有IPv4アドレスは、プライベートIPv4アドレスよりも、よりインターネット側に割り当てられるアドレスで、より多くの同時接続ができるもののようです。

IP address assignment in starlink bypass mode

IIJの谷口さんの記事「Starlinkとクラウドで月額171円の冗長VPNを構築してみました」の内容を追試して、見通しの良い場所に設置したスターリンクを遠隔利用できるようにします。

マイコンとしてRaspberry Pi 3Bを用い、iptablesなどによるファイアウォール、wireguardのVPNによる双方向遠隔利用、そして、squidの代理(プロキシ)サーバによるウェブアクセス利用を目指します。

configuration of starlink remote access

このstarlink側では、スターリンクとRaspberry Piを直接イーサネット接続し、両者に電源を供給します。一方、このhome router側には、インターネットから接続できる固定IPアドレスが割り当てられ、home routerの内部や外部にてwireguardが実行できることを前提にしています。インターネット側からstarlink dish側には接続できないため、VPNとしては、starlink dish側からhome router側への一方向接続です。

また、VPN利用のため、LinuxカーネルのIP forwadingをオンにすることになります。ファイアウォールやインターネットの知識が求められます。具体的な設定方法や内部アドレスの公開は、セキュリティホールになりますので、すみませんが、例としても示せません。

DHCPによるIPアドレス有効期間は、3分から5分程度と、短いです。このRaspberry PiにDHCPにて割り当てられたIPルートの例は次のとおりです。

$ ip r
default via 100.64.0.1 dev eth0 proto dhcp src 100.123.76.185 metric 99
xxx.xxx.xxx.0/24 dev wg0 scope link
34.120.255.xxx dev eth0 proto dhcp scope link src 100.123.76.185 metric 99
100.64.0.0/10 dev eth0 proto kernel scope link src 100.123.76.185 metric 99
192.168.100.1 dev eth0 proto dhcp scope link src 100.123.76.185 metric 99
$ ip -6 r
2406:2d40:3000:5777::/64 dev eth0 proto ra metric 99 pref medium
fe80::/64 dev eth0 proto kernel metric 1024 pref medium
default via fe80::200:5eff:fe00:101 dev eth0 proto ra metric 99 pref medium

この例では、謎のIPアドレス34.120.255.xxxへの経路が割り当てられています。このアドレスは、頻繁に変更されます。ここでのIPアドレスをhostコマンドで調べると、.bc.googleusercontent.com、すなわちGoogleのサーバのものでした。

home router側のPCから、squidを経由して、http://dishy.starlink.com/にアクセスすると、遠隔からstarlink dishの動作状態を監視できます。このIPアドレスは、192.168.100.1のプライベートアドレスで、starlink dishからのDHCPによりIPルートが割り当てられています。

status of starlink dish

この表示において、統計(statistics)情報ボタンがグレイアウトして利用できないのは残念です。また、speed testボタンも、Wi-Fi接続以外からは利用できないと表示され、starlink dishとstarlinkネットワーク間の速度評価の手段がなくなりました。visibilityボタンを押すと、starlink dishの障害物の評価結果が表示されます。ここでは、ほぼ、完璧な視界と評価されました。

status of starlink dish

SmokePingを用いて、home routerとstarlink dish間の遅延時間変化をグラフ化してみます。

status of starlink dish

これは、広島のstarlink dish設置場所から広島の自宅までのVPN両端の往復遅延時間(RTT: round trip time)の統計です。

計測方法として、5分間に1回の頻度で、連続して20回、pingを実行しています。ここでは、VPN経路としてIPv6アドレスを使用しています。

時々、150 msを超える大きなRTTや、50パーセント程度の大きなパケット損失が観測されていますが、多くの時間では80 ms程度のRTTと、0から5パーセント程度のパケット損失でした。通常のウェブブラウジングや、映像閲覧には、特に大きな問題はないと思います。

おわりに 

スターリンクの利用を再開し、バイパスモードの遠隔利用を試みました。プラン休止中にも維持料金がかからない上、プラン間の移動もできるようになりました。スターリンクは、日々アップデートされているので、ここに書いた内容もすぐに古くなるかもしれませんが、利用者にとって悪い方向にはならないようです。衛星インターネットが安価に利用できるようになり、良い時代になったと思います。


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