測位衛星Galileoの時刻サービスメッセージ

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はじめに

衛星測位は、電波受信のみで達成できるように設計されています。その電波には、測距信号(衛星から受信機までの距離測定に利用)と、航法メッセージ信号(測位計算を行うための衛星位置などのディジタル情報列)が含まれています。

この航法メッセージにて、測位以外のサービスが提供されることもあります。2024年4月に、欧州の測位衛星Galileoで、時刻同期のためのTiming Service Message(TSM)を定義する仕様書Galileo Timing Service Message Operational Status Definition (TSM OSD) Issue 1.0が発表されました。

私の受信機では、まだ、このGalileo TSMを確認できませんでした。

Galileo Timing Service Message

測位衛星受信機は高精度時刻提供サーバーとして活用されることもあります。

測位受信機は、初期状態において、緯度、経度、楕円体高が未知です。受信機は、衛星から受信機までの距離を電波の伝搬遅延差から求めるので、さらに、現在時刻も未知です。測位衛星間での完全な時刻同期を仮定すると、異なる4衛星の電波受信から、座標と現在時刻の同時推定ができるはすです。

しかしながら、衛星ごとにその内部時刻の精度が異なるかもしれません。Galileo TSMでは、この精度情報を提供しようとしています。TSMでは、すべてのGalileo衛星に対して、次の8段階(実際には4段階)の精度評価結果を放送することになっています。利用者は、この情報をもとに、求められる時刻精度に応じて、利用衛星を取捨選択することになります。

service leveldescrioption
1Not OK
2Timing Service Level 1 (max tolerable error of 1000 ns)
3Timing Service Level 2 (max tolerable error of 100 ns)
4Reserved for Timing Service Level 3 (max tolerable error of 15 ns)
5Spare
6Spare
7Spare
8Monitoring not available

TSMが放送されるであろう航法メッセージI/NAV(アイナブ、integrity navigation)では、メッセージ種別を6ビット長の「ワードタイプ」で区別します。仕様書TSM OSDによると、TSMのワードタイプ番号は44です。

測位衛星では、システム時刻として、協定世界時(UTC: coordinated universal time)ではなく、衛星独自の時刻系を用いています。Galileoの時刻系はGST(Galileo System Time)です。

Galileoでは、ワードタイプ5メッセージにてGST時刻情報を提供し、ワードタイプ6メッセージにてGSTとUTCとの間のより厳密な変換パラメータを提供しています。また、スペアワード(ワードタイプ0)にも、GST時刻情報が含まれています。

Galileo航法メッセージの受信

そこで、RTKLIBのコマンドラインアプリケーションstr2strと、QZS L6 Toolubxread.pygalinavread.pyを用いて、Galileo航法メッセージを確認してみます。測位衛星受信機u-blox ZED-F9Pの生データストリームからI/NAV航法メッセージを抽出し、その内容を表示します。

Galileo I/NAVメッセージは、2秒に1メッセージ割合で放送され、その周期は30秒です。そのため、30秒間以上、観測しなければなりません。

この出力は、衛星番号(例えばE15)、SSP(secondary synchronization pattern)番号(1から3までを繰り返す)、ワード番号、そして、括弧書きのSSP番号とワード番号から推定した30秒周期内の時刻、からなります。今回は、まだワードタイプ44は見つけられませんでした。

$ str2str -in ntrip://ntrip.phys.info.hiroshima-cu.ac.jp:80/F9PR 2>/dev/null | ubxread.py -i | galinavread.py
E15 SSP2 Word 16 (15)
E03 SSP2 Word 16 (15)
E05 SSP2 Word 16 (15)
E13 SSP2 Word 16 (15)
E30 SSP2 Word 16 (15)
E34 SSP2 Word 16 (15)
E08 SSP2 Word 16 (15)
E27 SSP2 Word 16 (15)
E21 SSP2 Word 16 (15)
E03 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E05 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E13 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E30 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E34 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E08 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E27 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E21 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E15 SSP3 Word  0 (17)  2024-04-06 08:26:04 (1284 548777)
E15 SSP1 Word  0 (19)  2024-04-06 08:26:06 (1284 548779)
E03 SSP1 Word  0 (19)  2024-04-06 08:26:06 (1284 548779)
E05 SSP1 Word  0 (19)  2024-04-06 08:26:06 (1284 548779)
E13 SSP1 Word  0 (19)  2024-04-06 08:26:06 (1284 548779)
E30 SSP1 Word  0 (19)  2024-04-06 08:26:06 (1284 548779)
E34 SSP1 Word  0 (19)  2024-04-06 08:26:06 (1284 548779)
...

なお、この例では、すべての衛星にSSP番号が現れましたが、古い衛星(例えばE12)はSSPを放送していないので、SSP番号が表示されません。Galileo衛星の打ち上げ日はみちびきホームページにて確認できます。また、2023年11月に公表されたGalileo Open Service Signal-In-Space Interface Control Document (OS SIS ICD) Issue 2.1で定義されたARAIM(エイレイム、advanced receiver autonomous integrity monitoring、ワード番号22)についても、まだ確認できませんでした。新しいメッセージの放送を楽しみにしています。

ところで、準天頂衛星みちびきは、L1S信号にて、測位精度をサブメーターレベルにまで高める補強情報と同時に、災害情報を伝達する災害・危機管理通報(DCR: disaster and crisis management report)も提供しています。さらに、みちびきでは、2024年4月から、その拡張情報であるDCX(DCR extended information)の提供を開始しました。DCRのメッセージタイプ(MT)は43、DCXのMTは44です。このDCXは、Galileo災害メッセージとの共通化が予定されているので、私はGalileo版災害情報伝達でもワードタイプ44として共通化されることを期待していました。Galileo I/NAVワードタイプ44がTSMに割り当てられたことは、やや残念に思っています。

測位衛星受信機は、昔も今も変わることなく測位結果を出力し続けていますが、その中身は進化を続けています。手軽に新しい技術に触れることができて、楽しく思います。


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