アラートフラグオン状態のみちびき初号機後継機信号を受信できた受信機
受信機一覧
内閣府が運用する、測位衛星みちびき初号機後継機(QZS-1R: quasi-zenith satellite 1 replacement)は、現在、試験信号を放送しています。もうすぐ、次のステップの試験信号送信が予定されており、アラートフラグオフ、ヘルスフラグ良好に移行し、ほぼ正式運用ともいえます。
QZS-1Rは、SVID(space vehicle identification)J04
、または、PRN(pseudo random noise)番号196
(測位やL6DのCLAS)、186
(L1S測位補強)、206
(L6EのMADOCA)のいずれかにて表示されます。これらの文字列を受信機モニタ画面に発見したら「OK!」と叫ぶことにします。
私が所持している受信機について、現在のアラートフラグオン状態でのQZS-1R測位信号受信可否は次の通りです。QZS-1R信号を確認できた受信機を○
印にて、可否不明な受信機を?
印にて表します。ファームウェア(FW)については、u-bloxのものをのぞき、最新のものであることを確認しています。
受信機 | FWバージョン | QZS-1R受信可否 | 備考 |
---|---|---|---|
NovAtel OEM729 | ? | 最新FW公開日 2020-10-20 | |
u-blox ZED-F9P | HPG 1.13 | ○ | |
u-blox NEO-M8T | TIM 1.10 | ○ | Emlid Reach RTK |
Sony Spresense | v.2.4.0 | ○ | 最終FW公開日 2021-12-24 |
KiwiSDR | v.1.482 | ? | 最終FW公開日 2021-12-22 |
Allystar HD9310 | 3.018bcc6590 | ? | 最終FW公開日 2019-12-27? |
bynav C1-FS | 7.57 | ○ | 最終FW公開日 2021-07-06 |
Drogger VRSC | 1.2.63D | ○ | (2022-01-02追記) |
QZS-1R出現時刻
なお、QZS-1Rの出現時刻に関しては、千葉工業大学の鈴木太郎先生が公開されているGNSS-Radarを用い、QZS-1Rの衛星軌道TLE(two line element)をCelesTrakから得て、衛星設定ファイルを更新して、調べました。
gnssradar/celestrack.txt
QZS-1 (MICHIBIKI-1)
1 37158U 10045A 21364.67751921 -.00000090 00000-0 00000-0 0 9998
2 37158 42.1625 135.7301 0757633 270.3981 80.4844 1.00272592 41390
QZS-2 (MICHIBIKI-2)
1 42738U 17028A 21364.60163928 -.00000146 00000-0 00000-0 0 9995
2 42738 42.0525 266.5517 0757002 269.5561 280.1703 1.00283494 16808
QZS-3 (MICHIBIKI-3)
1 42917U 17048A 21364.88786264 -.00000333 00000-0 00000-0 0 9998
2 42917 0.0672 155.5333 0002037 138.3521 252.3125 1.00270598 15929
QZS-4 (MICHIBIKI-4)
1 42965U 17062A 21364.88777542 -.00000321 00000-0 00000-0 0 9993
2 42965 40.8023 4.2848 0749963 271.6960 278.9637 1.00249791 15472
QZS-1R
1 49336U 21096A 21364.90784885 -.00000263 00000-0 00000-0 0 9990
2 49336 34.1421 104.4964 0760459 270.6847 183.2171 1.00265138 688
gnssradar/satlist.txt
5,193,37158U,QZS-1
5,194,42738U,QZS-2
5,195,42965U,QZS-4
5,196,49336U,QZS-1R
5,197,,
5,198,,
5,199,42917U,QZS-3
NovAtel OEM729
これは、想定する全ての信号の処理を試みるオール・イン・ビュー型の受信機ですが、QZS-1Rについては想定外のようです。 アラートフラグオンの衛星は信号追尾から除外するようでして、アラートフラグオフ状態のQZS-1R信号は受信できました。はやとちりしてすみません。(2022-01-31追記)
管理画面でみちびき初号機(QZS-1)のL6D信号は確認できていました。一方、QZS-2・QZS-3・QZS-4のL6D信号の確認できなかった理由がわかりませんでした。新しいフェーズに入った衛星測位技術を加速させる人材育成の発展的課題の3番、CSK変調の信号追尾の可能性についてを見て、QZS-1とその他のみちびきとで、変調方式が異なることを知りました。
NovAtelさん、QZS-1Rも含め、現在のみちびきに対応した新ファームウェアを公開してくださると、とても嬉しいです。
u-blox ZED-F9P
すでにZED-F9PでのQZS-1Rの災害・危機管理通報の受信にて述べましたが、L1 C/A測位信号とL1S測位補強信号の両方が受信できました。素晴らしいです。
u-blox NEO-M8T
u-blox NEO-M8Tを内蔵するEmlid Reach RTKの管理画面にJ04が現れています。素晴らしいです。
私は、REACH RTKに、あえて古いバージョンの管理ソフトウェアReachView 2.20.8を用いています。古いバージョンでは、ssh(secure shell)にてrootログインでき、ハッカーの偉大な仕事を観察できるからです。u-centerでTCPポート番号2000番に接続すると、バージョン取得や動作設定も可能です。
Sony Spresense
素晴らしいです。QZS-1RのL1 C/A信号を表すQCA 196
の文字があります。この観測に、SpresenseのArduino IDE(integrated development environment)開発ソフトウェアに添付されていたサンプルスケッチgnss.ino
を用いました。QZS-1RとQZS-1(QCA 193
)について、C/N0(carrier-to-noise density power ratio)が0 dB Hzなのは、ともにそのアラートフラグオンのためだと思います。
このとき、L1S信号としてPRN 189(QZS-3)のものを受信しています(Q1S 189
)。それまでの間に、みちびきのL1 C/A信号が受信できないのに、そのL1S信号を受信した瞬間があったようでした。私は、L1 C/A信号のアシストなしにL1S信号受信はできないと思っていました。これは私の間違いかもしれないので、今後、じっくりと観察します。
KiwiSDR
これは私のKiwiSDRの管理画面ですが、QZS-1Rを表すQ196
は観測できませんでした。ソースコードを確認したところ、QZS-1RのPRN番号がコメントアウトされています。このコメントアウトをとれば、QZS-1RのL1 C/A信号が受信できる見込みがあります。QZS-1(Q193)の信号については、アラートフラグがオンでした。
gps/sats.cpp
// QZSS (Japan) prn(saif) = 183++, prn(std) = 193++
// last checked: 9-Sep-2020
// sys.qzss.go.jp/dod/en/constellation.html [PNT L1 C/A entries]
{193, 339, 01050, QZSS}, // J01, QZS-1
{194, 208, 01607, QZSS}, // J02, QZS-2
{195, 711, 01747, QZSS}, // J04, QZS-4
// {196, 189, 01305, QZSS}, // (not scheduled until 2023)
// {197, 263, 00540, QZSS}, //
// {198, 537, 01363, QZSS}, //
{199, 663, 00727, QZSS}, // J03, QZS-3
// {200, 942, 00147},
// {201, 173, 01206},
// {202, 900, 01045},
(2022-01-01追記)
この記事を書いた後、KiwiSDRの作者にGitHubにてプルリクエストを送りました。元旦夕方にもかかわらず、リクエスト送信から約30分でマージが承認されました。近日中にKiwiSDRにてQZS-1Rが利用できる見込みです。ロケットマージに感謝しております。
Allystar HD9310オプションC
CLASファームウェア(L6D信号)の生データ観測結果(Pythonコードでの読み出し)
195 2190 448539 37
194 2190 448539 41
199 2190 448539 41
--> prn 194 (snr 41)
195 2190 448540 37
194 2190 448540 42
199 2190 448540 42
--> prn 194 (snr 42)
195 2190 448541 37 RS
194 2190 448541 42
199 2190 448541 42
--> prn 194 (snr 42)
MADOCAファームウェア(L6E信号)の生データ観測結果
205 2190 448509 38
204 2190 448509 42
209 2190 448509 42
--> prn 204 (snr 42)
205 2190 448510 37
204 2190 448510 42
209 2190 448510 42
--> prn 204 (snr 42)
205 2190 448511 37 RS
204 2190 448511 42
209 2190 448511 42
--> prn 204 (snr 42)
CLASでのPRN 196や、MADOCAでのPRN 206は現れませんでした。2022年 1月26日のアラートフラグ・オフでのQZS-1R試験信号放送や、新ファームウェアに期待しています。
→ アラートフラグオフによりQZS-1R信号を受信できるようになりました(2022-01-31追記)。
HD9310に用意されているL6D(CLAS)信号チャネル数は不明ですが、みちびき4機全部のL6D信号を復号できたこともありますので、少なくとも4チャネルはあります。QZS-1が元気になって、QZS-1Rのアラートフラグがオフになったときの、みちびき衛星5機全部のL6D信号を観測できる瞬間を楽しみにしています。
bynav C1-FS
シリアル-USB変換ケーブルを別のところで利用していて、管理ソフトウェアBYCONNECTが利用できないので、C1-FSの生データをRTKLIB 2.4.3b34のRTKNAVIのNovAtel OEM7のモードで観測しました。GPSとみちびきのL1 C/A信号のみに限定して表示しています。QZS-1(J01)、QZS-2(J02)、QZS-3(J07)とともにQZS-1R(J04)のL1 C/A信号を受信できました。素晴らしいです。
Drogger VRSC
(2022-01-02追記)
ビスステーションDrogger VRSCもみちびき信号を受信できることに気づきました。L6受信チャネル数が2で、それぞれにL6D受信とL6E受信とを独立に設定できることから、VRSCのu-blox NEO-D9C内蔵が噂されています。
私のVRSC受信機は、SVID 4
であるQZS-1RからのL6D信号(CLAS)を捕捉しました。素晴らしいです。GNSS RadarからQZS-1Rが私のほぼ天頂にある状態であり、受信機2チャネルのうちのひとつのチャネルにQZS-1Rが割り当てられました。
最近、CLASの補強対象衛星数が少なくなった気がします。
おわりに
QZS-1Rについては、2022年1月26日に次のステップの試験信号が放送されます。これは、事実上の早期運用開始ともいえるかもしれません。L1S信号に重畳される災害・危機管理通報の運用もそれにあわせて変更されました。この闊達な試験信号放送のアナウンスは、とても嬉しくて、ワクワクしています。