低価格4周波数帯GNSSアンテナ

category: Gnss
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準天頂衛星みちびきのL6帯を受信できる低価格アンテナを購入しました。

みちびきの放送する測位信号にはL1帯(1575.42 MHz)、L2帯(1227.60 MHz)、L5帯(1176.45 MHz)の3周波数帯があります。また、測位精度を高める補強信号がL6帯(1278.75 MHz)にて放送されています。

これらの4周波数帯のすべてを受信できる安価なアンテナを見つけました。中国のAliExpressに出店している、Shenzhen Beitian Communication Co., Ltd.BT-200です。このアンテナは、GPS L1 L2 L5、GLONASS G1 G2、BeiDou B1 B2 B3、Galileo E1 E2 E5a E5b E6、そして、NavIC L5を受信できるとされていますので、上述のみちびき4周波数帯全てを受信できそうです。価格は128 USDプラス日本までの送料約3 USDでした。

これがそのアンテナでして、JavadのGrAnt-G5TやTOPGNSSのGN-GGB0710よりもやや大きいです。このアンテナ内部の低雑音増幅器(LNA: low noise amplifier)の電源電圧範囲は、3-5.5 Vとやや狭いのですが、実用上は問題にはならないと思います。

low cost 4-frequency GNSS antenna BT-200

裏面には、アンテナの直径が200 mm、高さが68 mmであると記されています。アンテナ底面を基準(ARP: antenna reference point)としたアンテナの給電位置も記載されています。

low cost 4-frequency GNSS antenna BT-200

もう一つ、小型アンテナでみちびき4周波数帯を受信できそうなアンテナBN-345AJを購入しました。受信可能周波数帯は、GPS L1 L2 L5、GLONASS G1 G2、BDS B1 B2 B3、および、GALILEO E1 E2 E5a E5b E6である書かれています。GPS L1 L2、Galileo E5b、BeiDou B2Iを受信できるu-blox ANN-MB-00よりもひとまわり大きいです。

low cost 4-frequency GNSS antenna BN-345AJ

こちらが、BN-345AJの裏面です。

low cost 4-frequency GNSS antenna BN-345AJ

ネットワークアナライザと対数周期アンテナを用いて大まかに散乱パラメータを測定したところ、これらのアンテナはともにみちびき4周波数帯の受信が可能なようでした。早速、大学屋上にBT-200を設置して、その出力を2分岐信号スプリッタMini-Circuits ZAPD-2DC-S+を経由して、受信機u-blox ZED-F9PとHD9310に接続しました。これで、みちびきのL1、L2、およびL6の3周波数帯を観測できます。

low cost 4-frequency GNSS antenna placement

写真の一番右にあるのがBT-200です。これから左に向かって、Sony Spresense用のL1帯パッチアンテナ、KiwiSDR用のL1帯パッチアンテナ、u-blox NEO-M8T(Emlid REACH RTK)用L1帯パッチアンテナ、920 MHz帯LPWA(Low Power Wide Area)のLoRa(Long Range)のアンテナです。たくさんのアンテナが並び、幸せな気分でいます。

はじめに、受信機ZED-F9Pの出力を、Raspberry Pi上で動作させたRTKLIB 2.4.3b33のstr2strにて、TCPポート2000番に転送します。このZED-F9Pのシリアルポートを、Raspberry Pi上のデバイスファイル/dev/ttyF9PSにてアクセスできるようにしています

str2str \
    -in  serial://ttyF9PS:230400 \
    -out tcpsvr://:2000 \
    -b 1 \
    > /dev/null 2>&1 &

-bオプションは双方向モードを表し、ZED-F9Pからのメッセージを受信できるだけでなく、ZED-F9Pへコマンドを送信することもできます。この構成で、ソフトウェアu-centerを用いてZED-F9Pを設定することも可能です。ここでは、研究室内からRTKLIBのRTKNAVIを用いて、このZED-F9Pの受信状態を観測しました。

comparison of low cost and high end 4-frequency GNSS antennas at L1 and L2 frequencies

上がBeitian BT-200を接続したZED-F9Pの信号を、下がJavad GrAnt-G5Tを接続したZED-F9Pの信号をそれぞれ表します。各段には、衛星配置、L1帯信号強度、L2帯信号強度を表示し、また、衛星信号マスク角をゼロにして低仰角衛星を排除しないようにしています。GPS、GLONASS、みちびき、BeiDou、およびSBASの信号を受信するように設定しました。BT-200の信号は2分岐したものであり、GrAnt-G5Tの信号は3分岐したものですので、GrAnt-G5Tの信号表示が1.8 dB不利になり、公平な比較ではないことをご了承ください。しかしながら、BT-200とGrAnt-G5Tとで、ほぼ同等の信号強度が得られました。

次に、Allystar HD9310を用いて、みちびきL6帯信号を受信します。

comparison of low cost and high end 4-frequency GNSS antennas at L6 frequency

左がJavad GrAnt-G5Tのものであり、GPSのL1帯、みちびきのL1帯とL6D CLAS補強情報を受信しています。右がBeitian BT-200のもので、L6D CLASの代わりにL6E MADOCA補強情報を受信しています。こちらもほぼ同等の信号強度が得られていると言えます。もちろん、BT-200はGrAnt-G5Tの代わりにはならないかもしれませんが、GNSSアンテナにも低価格化の波が来ていると思いました。もう一つのアンテナBN-345AJについても、近日中に試してみます。

私の設備で、みちびきのCLASとMADOCAの同時受信ができるようになりました。みちびきを楽しみたいと思います。