ADALM-PLUTO (PlutoSDR) のTCXO交換
はじめに
ADALM-PLUTO(通称PlutoSDR)は、アナログデバイセスのソフトウェア無線機(SDR: software defined radio)です。
中部大学の海老沼拓史先生が書かれた記事「PlutoSDRの改造」を見て、私もPlutoSDRのTCXO(temperature compensated crystal oscillator)を交換したくなりました。このTCXO交換で、周波数安定度が25 ppmから0.5 ppmに改善され、PlutoSDRを測位受信機などに広く活用できそうです。
ついでに、送受信2チャネル目のコネクタも増設しました。
リビジョンCとリビジョンD
現在、流通しているのPlutoSDRのリビジョンはDです。PlutoSDRのハードウェア説明ページによると、リビジョンCは発売されていなく、リビジョンCとDとではほとんど同じとのことです。私のPlutoSDRのプリント基板にある表示も、Rev. Dと書かれていました。
しかし、PlutoSDRケースのシールに書かれたリビジョンはCでした。リビジョンCとDとで差はないとのことですので、気になりませんでした。
TXCO交換
交換するTCXOとして、海老沼先生の記事の中で挙げられていたEpson TimingのTG2520SMNを用いました。PlutoSDRのネジを外して、プリント基板上のY3
のラベルのあるTCXOを取り外します。はんだごてを2本使って取り外す方法もあるそうですが、私は低温ハンダ(表面実装部品取り外しキットSMD-21)と、はんだごて1本を使って、取り外し作業を行いました。
また、海老沼先生がされたように、私もR67
とC157
も取り外しました。これらは、チップ全体にはんだごてを当てても、ハンダが溶けませんでした。そこで、これらの取り外しについても、低温ハンダを活用しました。C157
のマークのそばに、C124
のマークがありますが、部品はついていませんでした。C124
に部品がついていないため、このC157
の取り外しは容易でした。PlutoSDR Rev.Dの回路図の7ページ左下を見ると、C124
はなくても良さそうです。
2入力2出力化(MIMO: multiple-input multiple output)
このリビジョンD基板は、2入力2出力への拡張部品と、入出力のためのu.FLコネクタが実装されています。そこで、ケースに穴を開けて、このu.FLコネクタにu.FL-SMA変換ケーブルを取り付けました。YouTube: Enable Dual Receive and Dual Transmit for the new revision of Pluto
海老沼先生の記事「改造版PlutoSDRの動作試験」を試しました。TX1とRX1を、TX2とRX2をそれぞれ接続しました。そして、TX1から2 MHz、TX2から5 MHzを出力し、その両者を受信するループバックコードを実行しました。私のPlutoSDRでも、2 MHzと5 MHzのところにピークが現れて、TXCO交換とMIMO化に成功しました。
前述のPlutoSDRリビジョンDハードウェア説明ページには、2番目の送受信チャネルについて、次のように書かれています。
The 2nd Rx/Tx channel internal to the rev D is not test during production test. If it works - bonus! If it doesn’t work; Pluto is only advertised as a 1 Rx, 1 Tx radio, and that is guaranteed/production tested on each unit - and that is what you received.
私はラッキーでした。このPlutoSDRを楽しんでみようと思います。
PlutoSDR リビジョンB
私は、リビジョンBのPlutoSDRも持っています。リビジョンBのTXCOY3
周辺の回路(7ページ左下)は、リビジョンDの回路と比較して、シンプルです。リビジョンBでは、Y3
の1番ピンがオープンになっています。
リビジョンB部品表とリビジョンD部品表とを見比べたところ、Y3
に同じ部品を使っていました。リビジョンBのPlutoSDRでも、このTCXOをより高安定なTCXO TG2520SMNに置き換えられそうです。
(2022-12-27追記)
リビジョンBでも同様にTCXOの交換に成功したようです。TXとRXを接続し、このソースコードを実行しました。
TX端子から送信した3 MHzを信号をRX端子にて受信しています。
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