マキシムのMAX17201を用いたリチウムイオン電池の残量推定

categories: experiment
tags: battery

マキシムMAX17201

スマートフォンなどの移動しながら利用できる電子機器の多くはリチウムイオン電池を使っています。リチウムイオン電池は、使い方を誤ると爆発の危険があります。しかしながら、怖がってばかりいては何もできませんので、自らのパラメータでリチウムイオン電池を充放電して、その電池残量を推定してみます。

リチウムイオン電池では、電池開放電圧と電池残量との間に一定の関係がありますが、充放電サイクル数が増えると、この関係は変化します。リチウムイオン電池の多くの標準出力電圧は3.7 Vです。端子電圧が高すぎると(典型的には4.2 V以上)リチウムイオンが金属リチウムになり、水と大きな反応をします。一方、端子電圧が低すぎると(典型的には2.5 V以下)永久的に電池容量が減少します。

電池容量を1時間で充放電する方法を1 Cと表現します。充電サイクル数とは、端子電圧が4.2 Vとなるときの充電電流が1/20 Cである満充電状態から、端子電圧が2.5 Vとなる放電状態までを、繰り返して利用できる回数を指すようです。充電サイクル数の増加により電池が劣化すると、その内部抵抗が増加することが知られています。

マキシム社のMAX17201は、充放電の電圧と内部抵抗の測定結果から、開放電圧と電池残量SoC(State of Charge)を推定します。

残量推定の実験

実験に用いたリチウムイオン電池は、中国KeepPower社のP1832Jです。ホームページ情報によると、この電池には過電圧と過放電の保護回路が内蔵され、パナソニック製のセルNCR18650BEを用いているとのことでした。この型番のカタログがパナソニックのホームページになかったので、そのセルに近い特性を持つセルNCR18650BDの特性を参考にして、この充放電器やこの残量推定ICを設定します。電池容量は3,200 mAhです。これは、3.2 Aで1時間放電できることを表します。 このリチウムイオン電池の推奨充電方法は、0.5 Cの一定電流(CC: constant current)充電後に4.2 Vの一定電圧(CV: constant voltage)充電を行うCCCV充電です。

このリチウムイオン電池のほかに、MAX17201の開発キットと、リチウムイオン電池を含む幅広い2次電池を自ら決めた設定値にて充放電できるパーフェクトネオを用いました。

MAX17201EVK

リチウムイオン電池のプラス端子と、充電器のプラス端子が接触しそうですが、問題ありません。これらのプラス端子は基板上で接続されているからです。

MAX17201はI2Cにてパソコンと通信を行いますが、この開発キットにはI2C-USB変換器が同梱されていました。IC設定ソフトウェアはマキシムのホームページからダウンロードできました。

MAX17201EVK interface

一般の残量推定ICには多くのパラメータを設定しなければなりませんが、このMAX17201には対話的に設定できるウィザードがありました。これを使って、電池容量を3,200 mAhに、電池タイプをNCRに設定して、ほかの項目は初期値のままにしました。

MAX17201 configuration

一方、この電池の充電は0.5 Cで行うことが推奨されています。充放電器の最大充電電流を1.6 Aに、また標準電池端子電圧を3.7 Vにそれぞれ設定して、充電開始しました。MAX17201の評価ソフトウェア画面は次のとおりです。

MAX17201 state of charge

このソフトウェアには、電池のSoCのほかに、充電電圧、開放電圧、充電電流、温度が表示されています。これらの時間変化をグラフ表示することもできます。

MAX17201 charging status

図の(1)の部分において、電池残量の少ないこの電池に対して、この充電器は、本来の1/10程度の充電電流(0.1 C)で充電する、プリチャージを行ったことがわかります。プリチャージが完了すると、残量推定ICの推定する電池残量は大きく増えました。次に、この充電器は、図の(2)の部分のように一定電流(CC: constant current)で充電しました。さらに充電を続けると、図の(3)の部分のように一定電圧(CV: constant voltage)で充電しました。この充電器が充電完了と判定したとき、この残量推定ICが推定したSoCは62.5%でした。この充電器の設定を見直せば、このリチウムイオン電池を目一杯まで充電できるかもしれません。

実験では、その後に800 mA(0.25 C)の低電流で放電して、このリチウムイオン電池の過放電保護が動作するときのSoCを測定しました。これらの充放電パラメータを変えながらこの実験を繰り返すと、それぞれのリチウムイオン電池を最大限に使いこなす方法がわかるかもしれません。

レジスタや電池認証機能

このソフトウェアはMAX17201のレジスタの状況を観測することができます。

MAX17201 register

またIC内の不揮発メモリ内容を書き換えられないようにすることもできます。

MAX17201 non-volatile memory

また、電池の偽造防止のための160ビットの質問語設定や、その電池からの回答も観測することができるようです。

MAX17201 challenge response

今回の実験を通して、リチウムイオン電池の理解が深まりました。安全に留意して、様々なデータを取ってみようと思います。