IIJmio音声通話料金の値下げ

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わかりにくいけど、料金値下げのお知らせ

インターネット接続サービスを提供するインターネットイニシアティブ(IIJ)の個人向けブランドIIJmioから「国内音声通話料金の改定に関するお知らせ」というメールが届きました。

この会社は、NTTドコモやKDDIのMNO(mobile network operator)回線を借り受けて、個人向けに通信サービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVMO: mobile virtual network operator)としての業務も行っています。このプレスリリースでは、その格安SIM(subscriber identity module)での音声通話料金を値下げすることが書かれています。

本質はプレフィクス番号自動付与

値上げ、値下げのプレスリリースは、通信に限らず、日常的に見受けられます。しかし、ここで着目すべきところは「みおふぉんダイアルアプリの利用やプレフィックス番号をつける手間をかけずに」というところです。

現在の携帯電話ネットワークにおいて、発信通話料金を値下げするためには、音声交換機を経由する経路の一部をバイパスする手段がとられます。このため、電話発信の際、交換機に対してバイパス経路利用を宣言する「プレフィクス番号」を相手先電話番号の前につける必要がありました。IIJmioの場合には0037-691です。

てくろぐ MVNOの音声通話にまつわる二つのトピック (2021年5月) 「プレフィクス自動付与機能」・「MVNOへの電話番号の指定」

もちろん、MVNOにはそのバイパス経路に対しても費用が発生し、その費用は通話料金に反映されるので、バイパスすれば必ずしも通話料金が安くなるわけではありません。一般には、通常経路と比較して、そのバイパス経路の方が安価に設定されます。

電話発信のたびにこの番号をダイヤルするのはユーザにとって大きな負担ですので、この番号入力を代行する、例えば「みおふぉん」なるアプリがあるのです。

現時点でIIJや、IIJmioのホームページに、この「プレフィクス自動付与機能」のことは書かれていません。しかし、このプレスリリースは、自動付与が実現できたことを表しています。

電話交換機でのプレフィクス自動付与

このようなプレフィクス番号ダイヤルの負荷を軽減する試みは昔からありました。固定電話では、かつて、ユーザ電話機が通話先電話番号を判断して、その電話機が自動的にプレフィクス番号を追加するLCR (Least Cost Routing)という機能をもつものがありました。その後、ユーザが書面で事前に接続業者を指定するマイラインが始まり、また、IP電話の普及により電話通話料金が安価になったことから、固定電話ユーザがプレフィクス番号を意識することはなくなりました。

上述のてくろぐには、モバイル交換機でのプレフィクス自動付与実現の困難さが書かれています。その記事の書かれた6月から、わずか3ヶ月でこの自動付与を実現したとも言え、すごいスピード感です。MNOにとっては追加の機器や作業が必要になり、MVNOにとっては接続交渉と追加機器が必要になるので、高度な専門職が通信環境をよくするために努力した成果とも言えます。通話料金に対してクレームがあったから、利益マージンを削りました、ではないのです。

このプレスリリースでは、値下げという言葉を使わずに、状況を淡々と説明しているといえます。すでに「みおふぉん」を使っているユーザにとっては、値下げではなく、同額なので、値下げという言葉は使えなかったのでしょう。

MNOなどの利害関係者を思うと複雑なところではありますが、いちエンジニア、いちユーザとして、おめでとうございます、ありがとうございます、と思っています。