gnss.go.jp 公開GNSS観測データの利用

category: gnss

はじめに

内閣府は、本日2022年4月1日に、GNSS統合データ共有システムMIRAI(Multi-GNSS Integrated Real time and Archived Information system)の運用を開始しました。さまざまな地域のGNSS(global navigation satellite system)の観測データのアーカイブやリアルタイムデータを提供するものです。誰でも無料で利用できます。そのウェブページは、とても凝っていて、圧倒されます。

MIRAIは世界各地に配置された監視局のデータを収集・配信するシステムです。ユーザ(登録が必要です)はMIRAIに接続された監視局のステータスをWebブラウザ上で確認できるほか、監視局のリアルタイムデータ(RTCM 3)を受信し、またアーカイブデータ(RINEX)をダウンロードすることができます。

RTK基準局サービスの代わりにはならないかも知れませんが、世界中のデータが集まっていて、素晴らしいです。

https://go.gnss.go.jp/

go.gnss.go.jp

アカウント作成

右上の「Sign up / Login」リンクをクリックして、アカウントを作成します。アカウント作成を通して、氏名は問われませんでした。アカウント作成には、

  1. nickname ニックネーム(英文字、数字、記号のいずれか、またはこれらの組み合わせ)
  2. organization 組織(個人としても良いと思います)
  3. country 国名(選択)
  4. 電子メールアドレス
  5. パスワード(英小文字、英大文字、数字それぞれをひとつ以上含む、8文字以上30文字以下)

の入力が必要です。その下に、

  • subscribe information for this website
  • subscribe status for MIRAI service
  • subscribe status of each GNSS station

のチェックボックスがありますが、一番下のもののチェックボックスは外しておくことをお勧めします。届いた確認メールのリンクをクリックすれば登録完了です。

gnss.go.jp sign up complete

「subscribe status of each GNSS station」をチェックすると、次のような多くのメール届きます。のちにユーザページにて各メール購読設定を変更することも可能です。

# GNSS Station Operational Status
# 01 Apr 2022 10:40:02 (UTC)
# NOTICE! This E-mail may be sent frequently due to the existence of stations with unstable communication.

KILK00AUS:Stop -> Active
CPVG00CPV:Active -> Stop
7DLN00AUS:Stop -> Active

アーカイブデータの利用

「GET ARCHIVE DATA」のリンクから観測データのアーカイブが利用できます。観測データは、RINEX(ライネックス)3.04形式ファイルが、Hatanaka Compact RINEX形式で圧縮され、さらにgzip圧縮されています。ブラウザ上からもダウンロードできますが、ファイル名などがわかれば次のようにcurlなどでもダウンロード可能です。email-addressとpasswordはご自分のものに置き換えてください。

curl -O -u email-address:password https://go.gnss.go.jp/rinex/daily/2022/001/22d/QSPP00JPN_R_20220010000_01D_30S_MO.crx.gz

gunzipにてこの観測データファイルを解凍後、そのHatanaka compact RINEX形式(拡張子crx)を一般利用されるRINEX形式(拡張子rnx)に変換します。このページの国土地理院へのリンクHatanaka compact RINEX for observation filesをクリックすると、変換ツール群(crx2rnx, crz2rnx, rnx2crx, rnx2crz)を入手できます。ここではcrx2rnxを使用して000200JPN_R_20220010000_01D_30S_MO.rnxを得ます。

gunzip 000200JPN_R_20220010000_01D_30S_MO.crx.gz
RNXCMP_4.1.0_MacOSX10.14_gcc/bin/CRX2RNX 000200JPN_R_20220010000_01D_30S_MO.crx

拡張子crzは、crxファイルをgzip圧縮したもので、例えばcrz2rnxは内部でcrx2rnxを呼び出しています。

macOSにてcrx2rnxなどを実行しようとすると、「開発元を検証できないために開けません」なるエラー画面が表示され、実行できません。二本指クリックで一度は実行するか、ターミナルでxattr -d com.apple.quarantineの後にファイル名を指定して、これらを実行できるようにします。

execution permission of programs on macOS

リアルタイムデータの利用

しかしながら、アーカイブデータよりも、リアルタイムデータの方が楽しいです。リアルタイムデータの形式は、RTCM(Radio Technical Commission for Maritime Services)v3形式です。NTRIP(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol、エヌトリップ)アカウント作成ページに進みます。

NTRIP account creation on gnss.go.jp

NTRIPユーザ名は8文字以上30文字以下の文字列です。NTRIPユーザ名はニックネーム、パスワードはアーカイブデータのものとしても大丈夫でした。再びメール認証後に、NTRIP利用が可能になります。

はじめに、観測局と、そのNTRIPマウントポイントを見つけます。とてもカラフルな地球儀が表示されたウェブページからこれらを見つけます。

mount point selection in gnss.go.jp

地球の表示をマウスで回すと、グーグルアースのように、背景の星空も動き、太陽も現れました。私は馴染みのある日本を探しました。

japan map in gnss.go.jp

今回のターゲットは東京都の離島である八丈島です。

hachijojima in gnss.go.jp

マウントポイントはHACHI00JPNであることがわかりました。TOPCON社のNET-G5受信機を利用していると書かれています。

次に、ここから観測データを確認するために、私はRTKLIBstr2strアプリケーションと、QZS L6 Toolを利用しました。NTRIP Casterのアドレスはntrip.go.gnss.go.jpです。

str2str -in ntrip://username:password@ntrip.go.gnss.go.jp/HACH00JPN 2> /dev/null | showrtcm.py

次のような観測結果をリアルタイムにて見ることができました。

RTCM 1077 G MSM7          G01 G03 G07 G08 G14 G17 G21 G27 G30
RTCM 1087 R MSM7          R03 R04 R05 R09 R10 R11 R19 R20 R21
RTCM 1097 E MSM7          E01 E07 E13 E18 E21 E26 E31 E33
RTCM 1117 J MSM7          J02 J03 J04 J07
RTCM 1127 C MSM7
RTCM 1019 G NAV           G02 svh=00
RTCM 1020 R NAV           R09
RTCM 1044 J NAV           J02 svh=00
RTCM 1046 E I/NAV         E11
RTCM 1077 G MSM7          G01 G03 G07 G08 G14 G17 G21 G27 G30
RTCM 1087 R MSM7          R03 R04 R05 R09 R10 R11 R19 R20 R21
RTCM 1097 E MSM7          E01 E07 E13 E18 E21 E26 E31 E33
RTCM 1117 J MSM7          J02 J03 J04 J07
RTCM 1127 C MSM7
RTCM 1019 G NAV           G03 svh=00
RTCM 1020 R NAV           R10
RTCM 1044 J NAV           J03 svh=00
RTCM 1046 E I/NAV         E12

GPS、みちびき、Galileo、GLONASSの観測データ(MSM7: Multiple Signal Message 7)だけでなく、これらの航法データも送られてきました。また受信機情報も含まれ(RTCM 1033)、受信機名はTOPCON TPS NET-G5、アンテナ名はTPSCR.G5 DOMEであると通知されました。座標データ(RTCM 1005や1006)はありませんでした。ユーザページにて、マウントポイントや観測局座標を含むCSVがダウンロードできますが、その座標が小数点以下4桁までしかないのが残念です。MSM7メッセージには、BeiDouのものもありましたが、内容は空でした。リアルタイムデータ観測は楽しいです。

おわりに

内閣府のGNSS統合データ共有システム「MIRAI」が始まりました。新しいMADOCA-PPP(Multi-GNSS Advanced Orbit and Clock Analysis - Precise Point Positioning)は、このMIRAIを活用するそうです。

ユーザページによると、現在、291観測局が登録され、256局が稼働しています。特に、オーストラリアには多くの観測局があります。南極に5観測局を発見しました。登録ユーザ数は81名、過去24時間ログイン数は41、リアルタイムデータ接続数は4、リアルタイムダウンロード量は111メガバイト、ウェブダウンロード量は344メガバイトとのことでした。

MIRAIの楽しい活用法を考えてみます。