導電性ウェアhitoeの体験
近年では、腕時計型の光学心拍計が普及しています。異なる2波長の光反射から、動脈血中酸素飽和度(SPO2)も求められています。ここでは、より詳細な情報を含む心電図を計測します。
心筋の導電率は骨や脂肪の導電率と比較して大きいため、心臓の活動により体表面に電位差が現れます。したがって、体表上に電極をつけることで心臓の動きがわかるといえます。しかしながら、体表上の電位差を電極により安定して収集するためには、導電性のクリームを塗布しなければならず、長時間の測定に適しません。NTTドコモと東レが開発したスポーツウェアhitoe(ひとえ)は、その内部電極に特徴があり、電極部分を水に濡らすだけで心電図を計測できます。ウェアに8,000円程度、その信号を伝送するための送信機(hitoeトランスミッタ)に10,000円程度かかりますが、SDK (Software Development Kit) を使ってAndroidまたはiOSでのソフトウェア開発ができるメリットがあります(hitoe SDKは、2019年4月26日に公開停止になりました)。
hitoeトランスミッタには、心電図計測の電極と、内部に加速度センサがついています。ここでは2019年2月頃にダウンロードしたAndroid用SDK Ver.1.3.0を用いました。このSDKは、hitoeトランスミッタとスマートフォンとのBluetooth接続、測定心電図のノイズ除去やスペクトル解析、動作推定などのデータ処理を行います。マニュアルによると、このSDKの対象はAndroid 4.4〜6.0またはiOS 8.1〜9.0とのことでしたが、最新のAndroidスマートフォンPixel 3aでも利用できました。
このSDKに添付されているサンプルアプリを利用しました。アプリ権限として、ストレージと位置情報の両方が必要です。hitoeライブラリはArmバイナリからなるので、Android Studio上のエミュレータは利用できません。デバッグは実機上で行うことになります。
このサンプルプログラムを起動して、画面下の「計測開始」をオンにすると、センサー選択画面になります。対象hitoeトランスミッタを選択して、PIN番号を入力します。このPIN番号はhitoeトランスミッタ裏面に記載されています。
このサンプルアプリの画面上には、LF/HF(ストレス度合い)、hitoe接続状態、心拍数、心電図、体の向き、40ミリ秒ごとに心電図振幅などが表示されます。これらの情報は、表示と同時にスマートフォン内部スレージに記録されますが、データ量が多いために、長時間利用には適しません。自分の運動時心電図を眺めるのは楽しいものです。
このSDKは2019年4月26日に公開停止となり、現在では入手できません。大変残念ではありますが、いままでお疲れ様でした。