みちびき補強情報CLASのグリッド地点
はじめに
準天頂衛星みちびきは、測位信号だけでなく、その測位精度を向上させる信号(補強信号)も送信しています。その補強信号の一つにCLAS(centimeter level augmentation service、シーラスと呼称します)があります。この補強情報には、衛星に関するものと、地域に関するものの2種類が含まれます。
前者については、すでに衛星から放送されている衛星位置情報と内部クロック情報の補正であり、GPS・みちびき・Galileoの内部クロックと座標の補正量が伝送されます。
一方、後者については、日本国土の代表地点での電離層による電波遅延量が伝送されます。衛星からの情報では、世界中の電波遅延量を一つのパラメータで表現していますので、この補強情報による精度向上が期待できます。
日本の国土座標に急に興味が湧いてきて、この後者のグリッド情報を調べました。CLASでは、日本の国土を19の グリッド ネットワークID(NID: network identification)に分割しています(2022-07-02更新)。CLAS仕様書IS-QZSS-L6-004に記述されたグリッド情報は、座標のみであり、そのままではどの地域の情報なのかわかりません。そこで、この座標を地理院地図(電子国土Web)にてプロットしました。
IS-QZSS-L6-004の97ページには、特定地点での電波遅延量を求めるために、グリッド内の複数地点での電波遅延量をその距離にて重み付けすることが例示されています。
The bathymetric contours are derived from those contained within the GEBCO Digital Atlas, published by the BODC on behalf of IOC and IHO (2003) (https://www.gebco.net) 海上保安庁許可第292502号(水路業務法第25条に基づく類似刊行物)
Shoreline data is derived from: United States. National Imagery and Mapping Agency. “Vector Map Level 0 (VMAP0).” Bethesda, MD: Denver, CO: The Agency; USGS Information Services, 1997.
NID 1: 沖縄の離島
沖縄本島の南にある宮古島、西表島、与那国島、波照間島などを表しています。含まれる地点数は全8点です。
NID 2: 鹿児島の離島と沖縄本島周辺
奄美大島、徳之島、沖永良部島、沖縄本島などを表しています。全11点です。
NID 3: 九州、屋久島、対馬
対馬から奄美大島北部までを表しています。全32点です。
NID 4: 四国
四国とその周辺を表しています。全15点です。
NID 5: 中国、隠岐島
中国地方と島根県の隠岐島を表しています。全15点です。
NID 6: 中部
中部地方を表しています。全27点です。
NID 7: 関東
関東地方を表しています。全22点です。
NID 8: 東北南部
東北地方の南部を表しています。全20点です。
NID 9: 東北北部
東北地方の北部を表しています。全18点です。
NID 10: 北海道南部
北海道の南部を表しています。全23点です。
NID 11: 北海道北部
北海道の北部を表しています。全19点です。
NID 12: 小笠原諸島
小笠原諸島の父島1点と、母島1点の合計2点です。
NID 13: 北方領土
この グリッド ネットワークIDは、IS-QZSS-L6-004(2021年7月14日発行)にて削除されました。 (2022-03-18更新)
択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島を表しています。全13点です。
NID 14〜19: その他離島
これらのグリッドについても、IS-QZSS-L6-004(2021年7月14日発行)にて削除されました。 (2022-03-18更新)
NID 14は竹島、NID 15は北大東島、NID 16は魚釣島、NID 17は硫黄島、NID 18は南鳥島、NID 19は沖ノ鳥島それぞれを表します。各NIDに含まれる地点数は1点です。
おわりに
CLAS補強情報は、国土地理院の電子基準点データをもとに作成されるとのことです。近隣電子基準点から遠く離れた地点の補強情報が作成されていることは興味深いです。グリッド点には、現時点ではとても行けない場所もあります。私が中高生の頃に、アマチュア無線のDXペディション(distance expedition: 遠距離遠征)局との交信に夢中になっていたことを思い出しました。