CLAS測位の走行実験

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CLAS(centimeter level augmentation system, シーラス)信号とは、日本の準天頂衛星3号機(静止衛星)が放送する信号で、GPSや準天頂衛星などによる測位結果の精度を向上させる補強信号です。この信号を直接受信して、リアルタイム位置出力できる機器AQLOC-Vを1週間、借りることができました

AQLOC-V

内閣府PFI事業貸出制度の詳細ページに、この電源は「ギボシ端子」の+12Vまたは+24Vと記載されています。ギボシ端子には複数のタイプがありすぐに対応できるか不安でした。しかし、貸出キットには、シガーソケットと、秋月電子製のACアダプタも付属していました。

測位結果はAQLOC-V背面にあるシリアルポート(Dsub-9ピン)から出力されますが、設定によりUSB-Bポートに出力することもできます。Macでしたら、USBケーブルを接続して、iTerm2などのターミナルソフトウェアで

screen /dev/tty.usbserial-1440 115200

とタイプしたら、測位結果が画面上にNMEA 0183形式で出力されました。screenコマンドではctrl-a(コントロールキーを押したままaキーを押す)H(大文字)の順に入力すれば、画面表示内容が逐次的にscreenlog.0というファイルに保存されます。キャプチャ終了もctrl-a Hです。screenコマンドを終了するときにはctrl-a qです。

測位出力先の変更は、イーサネット接続により行います。LANポートにLANケーブルを差し込み、MacのイーサネットアダプタにLANケーブルのもう一端を接続し、イーサネットのIPアドレスを172.16.40.1などに設定し、iTerm2などのターミナル画面で

telnet 172.16.40.248 8000 (IPアドレス・ポートは固定)

でプロンプトが出ました。マニュアルに従い、

nmeaport usb
config write

で測位出力先をUSB-Bポートに変更できました。他の設定項目はデフォルトのままです。

Positioning: Kinematic (High speed)
Antenna: JAVRINGANT-G5T
Observation cycle: 10 Hz
Satellite number L6 delivery: auto
NMEA output: USB
Network number: auto
Filter reset: off

同じく貸与を受けたJavad GrANT-G5Tを別途用意した5/8インチマウントに接続し、自動車のルーフに固定しました。

CLAS experiment car roof

測位結果の比較のために、Javad GrANT-G5Tの出力をMini Circuitのスプリッタで2分岐して、このAQLOC-VとJavad Alpha G3T受信機を接続しました。

CLAS experiment equipments

自動車の後部座席に置いたMacに、USBケーブルとLANケーブルを接続して、準備完了です。

CLAS experiment equipments

静止状態でNMEAメッセージの$GPGGAに記された位置を見てみると、緯度の小数点以下7桁目がほとんど変化せず、センチメートルオーダで位置が決定されていることがわかりました。

大学構内の片道1車線の同じ経路を5周、走行して、その測位結果を記録しました。この測位結果の軌跡が重なれば、10 cm程度の測位精度がでていると考えられます。結果は素晴らしいものでした。経路上の一部は樹木の中を通るのですが、南側が遮蔽されたためか、1度だけミスフィックスを生じて大きな軌跡の変位が現れました。

RTKLIBのRTKPLOTは、このNMEAファイルをそのままプロットできて、便利です。1周波RTKとの比較、インターネット配信によるMADOCAとの比較、国土地理院電子基準点成果を用いたRTKとの比較を行いました。RTKLIBを用いれば、観測データをあらかじめ準備しておくだけで簡単に比較できます。

貴重な体験をさせていただき、感謝しています。いつか結果を公表できればと思います。