u-blox ZED-F9P新ファームウェアHPG1.30公開
新ファームウェアの公開
昨年年末に、u-bloxの測位衛星信号モジュールZED-F9Pの新ファームウェアが公開されました。
リリースノートによると、この2021年12月23日に公開されたバージョン1.00 HPG 1.30のファームウェアは、以前のHPG1.13と比較して、
- 同社のNEO-D9Sと組み合わせることにより、L帯で送信される測位補強信号SPARTNが利用でき、
- みちびきのCLAS(centimeter-level augmentation service)のCSSR(compact state space representation)情報が扱え、
- 北斗(BeiDou)のSVID(space vehicle identification)37から63までの衛星が扱えるようになって、静止衛星のSVID 1から5までと、59から63までの利用をオンに設定できる、
などの機能追加が含まれます。これは嬉しいアップグレードです。CLAS処理機能は、日本の利用者にとって、とてもありがたいです。
CLASメッセージ処理機能
特に、新ファームウェアのCLAS処理に関しては、NEO-D9CからのCLAS情報を生データ形式UBX-RXM-QZSSL6
にてZED-F9Pに渡せば、そのZED-F9Pが直接CSSRを処理できるとのことです。その説明には、
QZSS L6 message. Input support for QZSS L6 messages containing a CLAS CSSR correction stream. UBX-RXM-QZSSL6 output requires a NEO-D9C.
と書かれています。この新ファームウェアでは、NEO-D9CからZED-F9Pへの一方的な情報伝送で良いように読めます。
また、メッセージ説明の最後の一文の意味がよくわかりませんが、CLASメッセージのZED-F9Pへの供給は、必ずしもNEO-D9Cでなくてもよく、例えばAllystar HD9310オプションCが出力するCLAS生データをUBX-RXM-QZSSL6
形式にするコンバータを作成すれば良いようにも思えます。
ZED-F9PとVRSCとの関係
ビズステーションDrogger VRSCは、u-box生データUBX-RXM-SFRBX
とUBX-NAV-PVT
の供給を求めて、それらと自ら受信したCLAS情報と統合して、仮想基準局(VRS: virtual reference station)を作り出します。このu-blox生データの供給は、ZED-D9Cの制約ではなく、VRSCの制約のようです。
また、新ファームウェアのCLAS処理は、GPS L1C/AやL2C、みちびきL1C/AやL2C、Galileo E1B/Cが対象であり、CLAS補強対象外のGalileo E5bについては書かれていません。一方、Drogger VRSCは、独自方法でGalileo E5bの補強情報を作成しています。
VRSCでのVRS作成は、NEO-D9Cよりもむしろ、主にビズステーションの努力だったのかもしれません。VRSCもまた興味深い受信機です。
一刻も早くUBX-RXM-QZSSL6
メッセージを確認し、新ファームウェアを試してみたいのですが、3台しか持っていないZED-F9Pはすべて使用中です。どうしようかと考えていますが、もうすぐ冬休みが終わりますので、早く決断しなければならないようです。今年の冬休みは、PocketSDRやみちびき初号機後継機を追いかけ、楽しいことばかりして過ごしました。