電子情報通信学会宇宙・航行エレクトロニクス研究会(宮城県仙台市)
ただいま、仙台
電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会、通称SANE研(さねけん)にて研究発表してきました。この1月研究会は2日間の開催で、1日目の開催場所は国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所の岩沼分室、2日目の開催場所は名取市文化会館です。特に、岩沼分室には実験用航空機があり、とても楽しく学会参加してきました。
仙台空港に着くと、いつものように富士重工業株式会社のFA-200エアロスバルがお出迎えしてくれます。「おかえり」と声をかけられているようです。
また、仙台空港のエアポートミュージアム「とぶっちゃ」には、エアバスA300-600Rの本物のコックピット(計器の一部とオーバーヘッドパネルについては写真)があります。昔は、操縦席に座ることもでき、操縦桿、スロットル、トリムも操作できました。今では、コックピット入口にロープが張られ、コックピットの中には入れなくなりました。
電子航法研究所 岩沼分室
電子航法研究所、通称ENRI(えんり、Electronic Navigation Research Institute)は、航空交通管理や通信・航法・監視システムの研究を行う機関です。この岩沼分室は仙台空港内にあります。しかしながら、この岩沼分室は、旅客ターミナルからは離れていて、空港循環バスなどを利用して訪れることになります。
門をくぐると、多数の研究用アンテナを見ることができます。
こちらにはレーダもありました。すごいです。
この研究会には、現地参加とオンライン参加のいずれも可能でした。現地参加者も多くて、すぐに会場は満席になりました。
私は初日午前に研究発表しました。タイトルは「Galileo Improved I/NAV航法メッセージの移動受信実験」です。欧州の測位衛星の電波を移動受信し、その結果をまとめたものです。
午前中には、日本の測位衛星みちびきによる新しい災害情報伝送に関する研究発表と、76ギガヘルツ帯ミリ波レーダによるドローン誘導に関する研究発表を聴講しました。
SANE研の幹事さんが昼食の弁当注文をとりまとめてくださったのですが(感謝)、さらにその隣にある海上保安学校宮城分校の食堂「文ちゃん食堂」でも唐揚げ定食を食べました。翌日の午後2時には新鮮なマグロが提供される予定とのことで、素晴らしい食堂です。
人の2倍量の昼食を食べたところで、午後の旅客機軌道予測に関する研究発表を聴講し、岩沼分室の見学会に参加しました。
岩沼分室の見学会では、新しく広々とした格納庫と、きれいに磨かれた実験用航空機(ビーチクラフト キングエア350)と、航空機からのADS-B(automatic dependent surveillance - broadcast)電波のマルチラテレーション研究設備を見学させていただき、また、研究活動をご紹介いただきました。この見学会には、国土交通省の方や、海上保安庁の方も参加されていました。
この飛行機は3機目のもので、別の場所で使われていたビジネス・ターボプロップ機を買取り、それを研究用に改造されたそうです。このキングエア350は、この隣にある海上保安庁でも活用されている人気機種とのことです。機内には、高性能測位衛星受信機Trimble NetR9が備え付けられていました。さらに、距離測定装置DME(デメ、distance measurement equipment)の10信号を同時に利用できる研究装置なども備えているそうです。実験の進展で機材変更するたびに変更申請が必要になるなど、航空機を用いた研究の大変さを知りました。また、コックピットも見学することができ、感激です。1機目のものは海外の別の場所で活躍中で、2機目のものは東北震災で流されたために登録抹消されたそうです。
マルチラテレーションとは、航空機からの電波を複数箇所にて同時受信して位置推定する方法で、それ自体はフライトレーダー24などでも用いられています。ここでのマルチラテレーション設備は、仙台空港内8箇所で受信した電波を光ファイバで施設内に取り込んで、時刻同期を取りながら航空機の位置推定を行う本格的なものです。いわゆるROF(ロフ、radio on fiber)にて電波受信していました。
滑走路上の異物(FOB: foreign object debris)を探知するレーダの研究では、小さな金属片だけでなく、小鳥や昆虫も検出できるとのことです。レーダでの不要反射をクラッタ(clutter)といいますが、小鳥や昆虫からの反射波は特別にエンジェルエコーと呼びます。コンクリートからのクラッタがある中で、1匹の小鳥によるエンジェルエコーも検出できるのは興味深いです。当然、大きな金属物体である飛行機も検出されるのですが、別システムからの情報を用いて、飛行機からの反射波をミュートしているそうです。
仙台空港臨空公園
学会1日目終了後、少し時間がありましたので、仙台空港臨空公園に行ってきました。空港ターミナルからは離れていますが、岩沼分室からは近いです。
公園の先にはベンチがあり、飛行機の離陸を間近で見ることができます。
仙台空港は比較的、交通量の多い空港ですので、たくさんの飛行機を見ることができます。小型機やヘリコプタも離着陸していました。
名取市文化会館
名取(なとり)は、仙台空港と仙台駅の中間にあり、この2点を結ぶアクセス鉄道の停車駅もあります。名取市文化会館も美しいところでした。
研究会では、地中レーダ(GPR: ground penetration radar)、航空管制やレーダ、無人航空機制御の研究発表を聴講しました。地中レーダの日本や海外での運用方法や、新しい航空管制、実機を使ったドローン制御の研究を知ることができました。
研究会終了時刻が16:30なので、そのまま帰宅することができません。これはありがたいご配慮で、研究会終了後、学会の懇親会に参加しました。
ここでは美味しいビールやジンギスカン、また、名取名物の根も葉もある鍋「せり鍋」を楽しみながら、多くの方々とお話をしました。SANE研の幹事さんにとても感謝しております。
地底の森ミュージアム
研究会終了の翌日、帰りの飛行機の出発時刻までに少々の余裕があったので、仙台駅と仙台空港の間にある地底の森ミュージアム(仙台市富沢遺跡保存館)に立ち寄りました。
ここは、2万年前の旧石器時代の焚き火の跡、炭化した木、化石になった鹿のフンや昆虫が展示されています。焚き火の跡は1箇所のみで、そこにいたのは3人であろうと推測されています。
その人々は、狩をしたものの、うさぎ1匹しか取れなくて家に帰れず、やむなくここで野宿をしたと考えられています。彼らは、どこからきて、どこへ行ったのかも、また使い終わった角の丸まった石器がまとめて穴に埋められていた理由も、未だわからないそうです。
ある1日での野宿の跡ともいえますが、旧石器時時代の生活の一部を垣間見ることができます。火の起こし方など、興味深い考察が展示されていました。
仙台では、多くの技術を学び、興味深い施設を見学し、飛行機をたくさん見て、美味しいものをいっぱい食べてきました。