UWB車載レーダの研究

背景

超広帯域(UWB: ultra wide band)無線方式は、米国FCC (Federal Communications Commission) の定義によれば比帯域(中心周波数に対してその無線方式が占有する帯域幅の割合)が20%以上の、典型的には80%以上の無線方式である。本研究課題開始時において、精密な物体位置同定のできるUWBレーダーの法制化への準備が総務省情報通信審議会などで始まった。ところで、レーダー受信信号には目標物以外からの不要反射波(クラッタ)が混入する。このようなUWBレーダーを自動車の衝突防止に適用するため、クラッタ電力分布のモデル化を行った。

研究成果

  1. モデル化においては、観測対象と波長との関係から図1の単一点反射、多点反射、少数点反射の3種類に分類することが適切であることを明らかにした。この電力分布は乱数に頼らない解析的手法により導出した[11]。 観測対象と波長の関係によるレーダー反射波の様子
  2. 従来のクラッタを抑圧法は、分解能の高い車載UWBレーダーには適用できない欠点があった。これはレーダー受信機での受信電力分布の変化により誤警報確率が高くなるためである。この課題を解決するため、電力分布を補正する統計的線形化法を考案した[9,11]。この成果を国内学会および国際学会(WPMC2007)にて発表した。
  3. 電力空間相関長と高次積率との関係を求め、空間相関はレーダー検出性能を劣化させることを明らかにした[10]。空間相関が指数減衰にて表される一例(大きな構造物がランダムに配置されたときの受信電力相関に対応)においては2.4 dBのパワーペナルティ(必要となるターゲット信号強度の増加分)が存在することを示した。この劣化を完全には取り除くことはできなかったが、提案した複数目標セルによるCFAR回路により軽減できた[1,7,8]。この成果は国内学会および国際学会およびジャーナル論文IEICE Trans. Commun.に発表した。
  4. また、本研究を遂行する過程で得た知見を新しい通信方式の性能予測に活用した。通信環境を認知して利用されていない周波数を用いて通信を行うコグニティブ無線においては、信号検出や干渉を与えずに通信を行うことが鍵となる。新たに考案した信号検出法[2,5,6]の性能予測に、本研究で実施したクラッタ抑圧性能の評価法を発展させた[3,4]。 電波を利用した実験を行うためには特別な免許(実験試験局免許)申請が必要となる。平成21年9月にレーダー機器に対する免許を取得して(図2)、スケールモデルによる実験を行った。また、研究終了年度において登場した民生用Kバンドレーダーを用いた実験も行った(図3)。 電波免許を取得したレーダー機器による実験 24 GHz帯レーダー機器による実験(モノパルス方式)

主な発表論文等

  1. Satoshi Takahashi, “A CFAR circuit with multiple detection cells for automotive UWB radars,” IEICE Trans. Commun., vol.E93-B, no.6, pp.1574-1582, June 2010.
  2. 高橋 賢, “差分帯域幅法を用いたコグニティブ無線における信号検出特性のスナップショット数依存性, " 信学総大, B-17-10, March 2010.
  3. Satoshi Takahashi, “Signal detection performance of a cognitive radio with the differentiated bandwidth method,” 信学技報, CS2009-111, March 2010.
  4. Satoshi Takahashi, “A differentiated bandwidth technique for signal detection of cognitive radios and its analytical evaluation with the characteristic function method,” 12th Symposium on Wireless Personal Multimedia Communications (WPMC’09), S10-2, Sendai, Sept. 2009.
  5. 高橋 賢, “複数電力センサによるコグニティブ無線の差分帯域幅信号検出法, " 信学ソ大, B-17-3, Sept. 2009.
  6. 高橋 賢, “異なる帯域幅を使用するOFDMコグニティブ無線の信号検出法, " 信学総大, B-17-16, March 2009.
  7. Satoshi Takahashi, “A CFAR circuit of detecting spatially correlated target for automotive UWB radars,” 信学技報, CS2008-62, Jan. 2009.
  8. Satoshi Takahashi, “A CFAR circuit of detecting spatially correlated target for automotive UWB radars,” 2008 International Symposium on Antennas and Propagation (ISAP), pp.1096-1099, Taipei, Oct. 2008.
  9. Satoshi Takahashi and Chang-Jun Ahn, “A statistical clutter suppression method based on given target-existence probabilities for high resolution UWB radars,” 2007 Wireless Personal Wireless Communications (WPMC), pp.860-863, Jaipur, Dec. 2007.
  10. 高橋 賢, “空間相関のある目標を検出する車載UWBレーダーのためのCFAR, " 信学ソ大, B-2-15, Sept. 2008.
  11. Satoshi Takahashi and Chang-Jun Ahn, “An improvement factor of clutter suppression with statistical power correction for high resolution UWB radars,“信学技報, CS2007-57, Jan. 2008.